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歪んだ「政治主導」

 沖縄・尖閣諸島沖での漁船衝突事件で、政府は中国の圧力に屈し、節を曲げた。日本は自ら中国より“格下”の国であることを内外に示し、失われた国益は計り知れない。中国人船長釈放の舞台裏を探った。

首相と外相の不在

 それは、実に奇妙な光景だった。那覇地検の鈴木亨次席検事は24日の記者会見で、中国人船長の釈放理由にわざわざ「日中関係への考慮」を挙げた。

 政府のトップである菅直人首相と外交責任者の前原誠司外相の2人が米ニューヨークでの国連総会出席のため不在中に、地検が外交的配慮に基づく判断を下したというのだ。

 「地検独自の判断だ。それを了とする」

 仙谷由人官房長官は24日午後の記者会見でこう繰り返した。柳田稔法相も「指揮権を行使した事実はない」と強調した。だが、誰が言葉通りに受け取るだろうか。

 政府関係者によると、仙谷氏は24日午前の閣議後、釈放を一部の閣僚ににおわせていた。地検の発表前に仙谷氏は柳田氏と官邸で会談している。

 「僕ら(前原氏を除く)政務三役5人は釈放決定を知らなかった。何でこのタイミングなのかと話し合ったぐらいだ」

 外務省政務三役の一人ですら事前には全く知らされていなかったと強調する。

「米の要請」口実に

 政府筋は29日の勾留(こうりゅう)期限を待たず24日に処分保留の決定が下った背景として、23日午前(日本時間同日夜)ニューヨークで行われた日米外相会談を挙げる。

 同筋によると、クリントン国務長官は尖閣諸島について「日米安保条約が明らかに適用される」と述べる一方で、尖閣諸島沖で起きた中国漁船衝突事件の早期解決を望む意向を伝えた。

 中国側とのハイレベル協議を模索するなど事態打開を探っていた仙谷氏は、前原氏から連絡を受けた「米側の要請」(政府筋)をもっけの幸いとばかりに利用し、船長釈放の口実にした可能性があるというのだ。外務省幹部は「官邸の判断だろう。こういうことは政治判断だ」と吐き捨てた。

 「首相と外相を批判の矢面に立たせないために、2人の不在時に仙谷さんが泥をかぶったのだろう」

 民主党関係者はこう観測を述べる。だが、ことは泥をかぶるで済む問題ではない。これまで弁護士出身の仙谷氏は「司法、捜査と政治との関係について中国に理解を求めたい」と、司法権の独立に言及してきた。首相や外相が不在のなかで進んだ「仙谷氏主導」(政府筋)の釈放劇は、歪(ゆが)んだ政治主導といってもいい。

中国が掘削の可能性

 「日本は法治国家だ。そのことを簡単にゆるがせにできない。(日本が)超法規的措置をとれるのではないか、ということが前提にあるから(中国側は)よりエスカレートしていく」

 玄葉光一郎国家戦略担当相も24日午前の記者会見で胸を張った。だが、那覇地検の釈放方針発表後に官邸を出る際、玄葉氏は記者団に無言を通した。

 閣僚経験者は「地検が日中関係にわざわざ言及したのは、精いっぱいの抵抗ではないか」と解説してみせたが、中国が強く出るとひざを屈する弱い日本というイメージは世界に広まることになる。

 仙谷氏らは船長の釈放で事態の沈静化を期待しているのだろうが、資源エネルギー庁幹部は24日の自民党外交部会で、東シナ海の天然ガス田「白樺」(中国名・春暁)で、中国が掘削作業を開始した可能性が高いとの認識を明らかにした。

 今回の事件は中国が東シナ海での活動をますます活発化させるきっかけとなったかもしれない。

「特例」再び

 「那覇地検の決定は、3~4時間後には(米ニューヨーク滞在中の)菅直人首相の耳に入るだろう」

 仙谷由人官房長官は24日午後の記者会見で、いったんはこう述べ、船長釈放決定は首相の耳には届いていないとの認識を示した。

 そしてその後、秘書官が差し入れたメモを見て「首相にはすぐに連絡が届いているということだ」と訂正した。まるで、首相の意思・判断には重きを置いていないかのようだった。

 船長釈放の一報が伝わる約5時間前。23日午後9時(日本時間24日午前10時)ごろ、首相は同行記者団との懇談で笑みを浮かべてみせた。

 「今いろんな人がいろんな努力をしているんだから」

 日中関係の改善策を問われた際の答えがこれだ。

 民主党政権には中国の圧力に屈してルールを曲げた“前科”がある。昨年12月の習近平国家副主席の来日時に「1カ月ルール」を破って天皇陛下との「特例会見」を実現させたことだ。

 「あのときは官邸がぐらついたが今回は仙谷氏をはじめきっちりやった。中国も驚いて交渉レベルを楊潔●(=簾の广を厂に、兼を虎に)外相から戴秉国国務委員に上げて圧力をかけたが政府は踏みとどまっている」

 8日の船長逮捕の数日後、外務省関係者はこう語っていた。だが、その評価は裏切られた。

テープ公開せず

 24日昼、自民党本部での党外交部会。海上保安庁の檜垣幸策刑事課長は中国漁船と海保の巡視船が衝突した瞬間を収めたビデオテープをなぜ公開しないのか、苦しい釈明に追われた。

 高村正彦元外相「ビデオを見たら、(中国漁船側が)ぶつかってきたことが一見して分かるのか」

 檜垣刑事課長「一見して分かります」

 ならばなぜ、貴重な証拠を国際社会にアピールしようとしなかったのか。白黒はっきりつけるのを嫌う事なかれ主義が垣間見える。

 政府内でも公開すべきだとの意見はあったが、仙谷氏は「刑事事件捜査は密行性をもって旨とするというのは、刑事訴訟法のいろはの『い』だ」(21日の記者会見)と後ろ向きだった。

 刑事訴訟法47条は「公益上の必要が認められる場合」は証拠書類の公開を認めている。政府は、自国に有利なはずのビデオ公開を「公益」にかなわないと判断したことになる。

基盤揺るがす火種

 政府筋は今回の釈放決定について「電光石火の早業」と評するが、いかに仙谷氏とごく少数の人間にしか知らされていなかったかが分かる。

 「那覇地検(の鈴木亨次席検事)は『今後の日中関係を考慮して』と言ったがこんなことを検事が言っていいのか。あらゆる泥をかぶるというなら、首相臨時代理である仙谷氏が(自分の責任で)言えばいい」

 自民党の石破茂政調会長は24日夕、記者団にこう指摘し、10月1日召集の臨時国会で追及する考えを示した。日本の国際的地位低下を招いた仙谷氏らの独走は、国内でも新たに発足した菅内閣の基盤を揺るがす火種となりそうだ。

(阿比留瑠比、ニューヨーク 酒井充)

(MSN産経ニュース、http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/100925/plc1009250123003-n1.htm

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